老化は病であり、
治療や予防ができる可能性がある。
海外では、老化についてこういった常識を覆すような考えに変わりつつあります。
そのカギを握るのが、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)です。
内科医・皮膚科医の日比野佐和子先生に詳しくうかがいました。
皆さんはNMNという成分を知っていますか?
テレビや新聞などで“若返り成分”や“健康寿命を延ばす有力候補”として取り上げられているので、「名前だけは聞いたことがある!」という人もいるかもしれません。
テレビや新聞などで“若返り成分”や“健康寿命を延ばす有力候補”として取り上げられているので、「名前だけは聞いたことがある!」という人もいるかもしれません。
抗老化研究の第一人者・ワシントン大学の今井眞一郎教授の著書『開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線』でも話題の成分として紹介され、注目度も期待度もグングン上昇中です。
NMNはビタミンB3(ナイアシン)を材料に私たちの体の中で自然につくられています。この成分は老化を抑えるカギといわれ、世界中でさまざまな研究が行われています。
私たちの未来に輝きを与えてくれる次世代型ビタミン。それがNMNなのです
NMNの説明の前に、まずは関係の深いNADという成分についてお話ししますね。
NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は私たちの体の中でエネルギーを作ったり使ったりするときに必要な言わば「通貨」のような物質で、壊れた遺伝子の修復にも使われています。
さらに注目すべきは、長寿遺伝子を活性化する役割があることです。
長寿遺伝子は老化や寿命をコントロールする遺伝子です。
専門家による研究では、長寿遺伝子の機能を高めたマウスは老化が遅くなり、健康寿命がのびたという結果も出ています。
残念なことに、長寿遺伝子は普段は眠っていて働いていません。老化を抑えてくれる遺伝子なのに、眠ったままにしておくのはもったいないですよね(笑)。
長寿遺伝子を目覚めさせ、働かせるにはNADの力が必要です。しかし、その量は年とともに減ってしまいます。
最新の研究では、このNADの減少こそが老化の原因だと言われているんです。
アンチエンジングのためには、ぜひNADを増やしたいもの。
NADそのものを摂っても胃や腸で分解されやすく、体内には吸収されにくいため、これまでの研究から、軽〜中程度の有酸素運動、カロリー制限、NMNの摂取などでNADが増えるということがわかってきました。
運動も食事の制限も続けるのが難しい…となると、体内でNADに変わるNMNが注目されるのは当然ですよね。
ワシントン大学で行われた今井教授らの実験では、マウスにNMNを1年間与えたところ、人間でいうと60代になっても40代並みの体をキープしたという驚きの結果が発表されました。
※NADは様々な酸化還元反応を媒介する必須の補酵素。
NMNを摂ることでNADが増え、長寿遺伝子を働かせて、老化にブレーキをかけたということがマウスの実験で実証されたのです。
※NADは様々な酸化還元反応を媒介する必須の補酵素。
じつは、NMNは野菜やフルーツ、牛肉などの食品にも含まれているんです。ただしその量はごくわずか。1日に推奨される250mgを摂るには、ブロッコリーなら2200房、アボカドなら190個と、普段の食事から摂るのはほぼ無理!ですね。
じつは、NMNは野菜やフルーツ、牛肉などの食品にも含まれているんです。
ただしその量はごくわずか。
1日に推奨される250mgを摂るには、ブロッコリーなら2200房、アボカドなら190個と、普段の食事から摂るのはほぼ無理!ですね。
効率的なのは、サプリメントなどで毎日摂ること。
希少な原料のため1ヶ月分で数万円、なかには10万円以上の高額な商品もありますが、研究が進むにつれて徐々に入手しやすいものも出てきています。
最近では美肌とNMNの関係が美容業界でも注目され始め、化粧品などへの応用が進んでいます。
NMNに着目したスキンケアを上手に取り入れて若々しい素肌づくりに役立てるのも賢い選択ですね。
NMNに着目したスキンケアを上手に取り入れて若々しい素肌づくりに役立てるのも賢い選択ですね。
私も注目している次世代型ビタミン“NMN”。
ヒトでの研究も進んでおり、これからの健康長寿の大きな希望になると期待しています。
参考資料
今井眞一郎『開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線』(朝日新聞出版)
参考資料
今井眞一郎『開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線』(朝日新聞出版)